少々大げさなタイトルですが、実のところB787購入に伴いANAの懐具合は非常に厳しい様です。
2年前の7月、ANAは公募にて約1,500億円もの増資を図りました。羽田・成田の拡張に伴う事業拡大と、調達した資金で50機の予定だったB787の調達を55機に増やし、競争力の向上を目指すというのがその目的でした。
しかし普通であれば増資内容を発表するに留まるところ、この記者会見の席で同時に【需要の少ない路線の運休・減便や人件費のカット、さらに無料だった機内食の一部有料化という合理化策を公表】したのです。
国内・海外を奔走し、自力で増資にはこぎつけたものの経営環境は依然甘くなく、2年前から現在に至るまでの社会情勢とライバルJALの国家管理再建によるしわ寄せ(JAL優先)や台頭著しいLCC(ローコスト・キャリア)の存在から、今後さらに合理化を求められる状況にあります。
合理化と同時に収益を上げるためには低運賃勝負では話にならず、サービスが良ければ高い運賃を惜しげもなく払ってくれるプレミアム層をターゲットにするのは当然の流れです。先のエントリー でも書いた【Diaに対する新たな戦略】が既に始動しているかもしれません。
また、サービスの向上に充てる資金は無限にある訳ではないため、上位のさらなるサービス向上(改善)を行えば、下位のサービス見直し(一部改悪)はある程度やむを得ないものとなります。しかし収益の約8割は多頻度客(上級会員)で構成されている現状を考慮すると大きな見直しは死活問題にもなりかねません。
実際にJGCと比較するとSFCのサービスには過剰とも思える部分が見られます。
特に大きな違いは【搭乗マイルの50%付与】で、JGCでは【搭乗マイルの35%付与】と15%の差があります。マイレージサービス事業は、クレジットカード会社等への販売(ポイントからのマイル交換)では交換レートの良さから大きな収益性をもたらしますが、搭乗ボーナスで与えたマイルからeクーポンへ交換し利用されると単なる値引運賃となり、収益が落ちる「諸刃の剣」です。
もともとは前年度の実績に応じた【見返り】として【今年も搭乗してね】という発想が【ボーナスマイル】を誕生させたものですが、過激な空中戦(競合)の最中いつしか顧客離れを阻止するべく【他社よりも多くのボーナスを永久に与える】結果を招きました。
本来【利用者の利便性向上】の為に存在するサービスだったものが競争によりコスト度外視のものへと発展し、またその対象者数も膨れ上がった結果、サービスの改悪若しくは終了を余儀なくされる…これでは本末転倒です。
21万人を超す多頻度客の半数を構成するSFCに対しての搭乗ボーナスマイルをJGC並みに見直すことで、会員1人辺りに対しては小さな見直しですが、その対象者数のボリュームから収益減に対しては大きな差が生じます。
まずはSFCに対し【無駄に身を削って与えてしまっている】ボーナスマイルに着手、JGCを下回らない程度(または横並び)に見直しをするのではないか?と予想しています。オーバー・サービス(行過ぎたサービス)には必ず見直しする時期が来るもので、今がその時ではないでしょうか。
最後に、ポイント交換レートの高いクレジットカード各社へのマイル販売に注力すること(マイル交換やラウンジ利用などなど)も今後ひとつの収益向上策となります。しかしそれは溢れるほどにポイントを保有しかつポイントの使い道が無い(欲しい商品が無い、既に持っている等)富裕層のANAアメックスやANAダイナースホルダーを狙った戦略(キャンペーン)となるでしょう。何も手を打たないよりは良いと思いますが…。
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