昨年末のバンコク渡航の主たる目的はスパ巡りでした。いわゆる「デスティネーションスパ」というものです。
言葉の意味は「デスティネーション=目的地」の通り、スパ目的の小旅行ですが「ホテルにスパが付いている」ではなく「スパを利用するために、そのホテルに泊まる」というニュアンスです。ゲストお断り(宿泊者のみ利用可)というスパもあり、この場合は泊まるしかありません。
スパに見る
今では当然のことですが「プレミアムカードにはコンシェルジュサービスが付いている」ということも、実際にはクレジットカードの付加価値を高めるために「後付け」されたサービスであり、デスティネーションスパも同様に、サービスを開始した後に、利用者(=消費者)による利用スタイルに沿ってサービスの形を変えていき、到達した姿と受け止めました。
これまでは「普通」だった1時間半などのコースは今では最短コースであり、主に2時間半から3時間、場合によっては「スパキュイジーヌ(食事を挟む)」付きの5時間から1日掛りのコースなどの利用が増えているそうです。内容は自分自身でコースを選ぶので、通常のスパと何ら変わりません。
提供する側が想定していたサービス内容と対象者が異なった(と気付いた)場合、ここで大きな分岐点があり、利用者が呆れて使わなくなるケース(オーナーが考えているレベルの水準に止まる)と、顧客が意見・要望を伝え改善に向けて協力してくれるケース(オーナーが想定した水準を超えて進化する)に分かれますね。
当然、万人受けするサービスを目指す場合、特定の層に向けたサービスを提供する場合もあり、「変わらないことが良い」こともあります。
物価に見る
都内のスパでのアロマトリートメントも3時間=75,000円というところがありました。私は最近の価格設定について、セラピストや周囲の女性陣に尋ねてみたところ「もはや一般女性が使える領域ではない」「女性専門エステの痩身コースが3回受けられる」と、スパのアロマが違う領域に突入していることを熱く語ってくれました。
スパに限らず、物価は思ったより早いスピードで上がっているように思えます。ある宝飾店は年内に一律10%前後の値上げを予定しており、また別のある眼鏡店に久しぶりに訪れたところ、私が数年前に父へ贈った85万円のフレーム(K18 YG)が150万円になっていました。金の値上がりも勢いを増しており、ホワイトゴールドのコーティングに使うパラジウムも高騰しています。
そう考えると、アメックスのセンチュリオンやプラチナの年会費が発行当初の2倍になったことは、驚くことではないのかもしれませんね。むしろ驚くべきは、発行当初からの年会費設定を維持しているJCB ザ・クラスや三井住友 プラチナの方だと思います。
アメックスに見る
私がこの手の記事を書く際、アメックスに関するテーマが多いのは、アメックスという会社のブランディング・マーケティング手法に興味があるためで、その手法を称える内容が多いのも、他のカード会社との相対的な比較であり、企業として絶対的にアメックスを支持しているわけではありません。
アメックス(特にセンチュリオン)というブランドが凋落すればそれも結果ですし、どのようにこれまで築き上げたブランドを維持し、伸ばしていくのかに興味があります。
ウィキペディアによると、センチュリオンは各国の年会費設定が大きく異なります。
なぜ台湾が最高値の約55万円(TWD$160,000)であり、一方のアラブは約30万円(US$3,000)なのか。なぜ、アメリカやカナダ、インド、香港等は「One Time Fee(入会金)」を取るのか。なぜメキシコは「About 56,000 pesos」なのか。決して物価だけではないその値付けに、アメックスが各国の国民性・消費行動をどのように感じているかを知るためのヒントがあるように思えます。(現在では日本でも入会金が必要です)
動向を見る
自分1人で考えてしまうと、自身の所得と物価などの主観的な判断しかできませんが、カード会社には何百万人という会員がいて、年齢・性別に加え職業、地域、家族構成などの属性、利用額1つとっても最大・平均・最小値など幅広いデータをもっています。
以前も書きましたが、今このタイミングで年会費を3割増し(発行当初の2倍以上)にするプラチナカードは、アメックスから見ればその価値があり、そこにお金を払う人達がいるという判断ですね。
間違っているかもしませんし、正しい手法かもしれません。時間が経ち数多くの人達の手に触れてみた結果、アメックスの「判断」に対するホルダーの「反応」が出てくるはずです。
今後も引続き各社プレミアム系カードの動向を見守っていきたいと思います。